ゴルフヒストリー

NICE ON 6月号【Vol. 440】


グリーンの進化の先駆けとなった「サンドグリーン」とは・・・

日本のゴルフの草創期には、現在のような芝を育成する技術が発達していなかったため、グリーンについてもほかの手法が用いられていた。それがサンドグリーンであった。
1901年(明治34年)に開場した日本初のゴルフコース・神戸ゴルフ倶楽部も当初は「サンドグリーン」が使用されていた。
サンドグリーンと言うと、現在のゴルファーは、校庭や公園にある砂場のようなものを連想するが、さにあらず、テニス競技で使われるクレーコートと同じ表面を想像してもらえばわかり易い。平らになった芝の表面を20センチ程掘り下げて、その表面をテニスコートのように固め、グリーン表面の球を転がすところが皿状のように窪んでいた。
土を固めてその上に、薄く砂を敷き平らにならして使用していたのである。そういった構造だから、一度使ったらバンカーと同じで後続組みのためにきれいに地ならしして置くのがエチケットだった。そのほか、表面が砂であったことから強風などの時はプレーに支障を来たすことも多かったようだ。

こういったことから、神戸GCのサンドグリーンには、奇妙なローカルルールが設けられていた。まず、表面が砂であったためボールの傍に偏った砂の盛り上がりがあると、それを手で払いのけても良かった。また、ボールが掘り下げた淵に止まるとシューズ2足分だけ内側に無罰でプレースできるというものだ。なんとも牧歌的風景が展開されていた訳である。
牧歌的といえば、こんなエピソードもある。かなり距離のあるアプローチショットが首尾よくグリーンに止まると、キャディーは大声で「入った」と叫ぶものもいたと言う。現代では「グッド・オン」「ナイス・オン」と言うが、「入った」はそれほどまでに止まりにくかったことも想像させて面白い。

しかし、このサンドグリーンも管理に手を焼く上、ゴルフ本来の公平さに欠けるとして、芝生育成の技術の発達もあって昭和の初期頃には姿を消していくことになる。中東やアフリカなどのゴルフ場では、今もその名残をとどめるゴルフコースもある。
パッティンググリーンは芝の緑を連想するが、ゴルフの初期には砂で固めたうえでサンドグリーンと呼んでいた。もともとグリーンの芝の下には砂や土を入れて形を作っているし、芝の育成には砂を入れることもあるので、あながちサンドグリーンは必然的要素があったといえる。
こうしてゴルフの歴史をたどると面白いことが分かってくる。

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