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「良いゴルフ場(コース)とは」、を考えてみたい
ゴルフ談義でも良く出てくるテーマであり、長い歴史の中でも論じ続けられたテーマだ。ゴルファーがゴルフ場を選ぶ場合、様々なチェックポイントがある。ある雑誌が行っているゴルフ場人気ランキングをみると、①予約件数が多い②クチコミ評価が高い③ゴルフ場難易度④ホール難易度という項目でそれぞれのランキングを抽出している。これは、ゴルフ会員権選びの基本ポイントにも通じる事なので、参考にする人も沢山いる。
ただ、本稿では、設計者から見た「良いコース」という視点に立って、このテーマを進めてみたい。
あのマスターズの会場としても有名なオーガスタ・ナショナルGCを建設するにあたって、共同設計者であるボビー・ジョーンズとアリスター・マッケンジーが交わした設計思想での共通点が興味深い。意外にもそのコンセプトは万人が納得する基本事項なのだ。
それは、
Ⅰ.多くのゴルファーが楽しめるものである事
Ⅱ.技術だけでなく、頭を使う戦略が組み立てられるものである事
Ⅲ.アベレージ・ゴルファーにもホール攻略のチャンスを与えながらも、トップ・プレーヤーにはアンダー・パーを出すには最高のプレーが求められるものである事
Ⅳ.自然の環境を保持しながら、自然のハザードを活かし、人工的な造形は最小限にとどめる事を確認している。
そして、理想のコースを造るには、他の良いコースの基本は取り入れるが、それはストレートな模倣であってはならない事も付け加えている。
注目したいのは、戦略型設計の概念が底流にあることと、原地形の大切さを語っている点だ。ありのままの素材をいかにプレーに絡めるかを重視し、良いコースはその結果生まれると考えている。この理念によって、あのすばらしい、多くのゴルファーを魅了するオーガスタが完成したといえる。
また、古いランキングの基準もあるので参考にしていただきたい。
1. ショットの良し悪しが結果として現れるか
2. ティーショットからパッティングまでミスなしで終わらないとパーは期待できないような設計になっているか
3. 18H中のパー3、4、5の数とその順序、全体のプレーのリズム感、14本のクラブを活かすことができるか
4. ホールが美しく周辺景観との調和がとれているか
5. 1ラウンドして心象風景に残るホールはあるか
6. コースメンテナンスの状況は良好か
7. 高い評価は持続・継続したものか
8. 重要競技(トーナメント等)の舞台となっているか
などである。
ゴルフは融通無碍のゲーム。コースはプロ、トップアマ、一般ゴルファーのいずれにも受け入れられるプレーの舞台でなければならない。そして、最も重要なのは、その評価が、長き歴史の中で培われたものであることだ。今日明日にできたコースが高い評価を受けること自体おかしいし、問題があるとする評論家もいる。このことに100%賛同するつもりはないが、ローマは1日にしてならず。長い歴史の中で「良いコース」と評されるところには、こういった基本が脈々と流れているということがお分かり頂けるだろう。
(*写真と記事とは関係ありません)