ゴルフヒストリー

NICE ON 10月号【Vol. 444】


日本初のゴルフ雑誌「阪神ゴルフ」と日本人が出版した英文ゴルフ書は、ゴルフ雑誌文化を築くきっかけとなった。

ゴルフに関する専門誌・雑誌は多く発刊され、ゴルフブームの盛衰とともに創刊、廃刊を繰り返してきた。そして、時代とともに、ゴルフ雑誌文化というものを築き、世相をも映し出してきたといえる。
では、日本初のゴルフ雑誌が発行されたのはいつだろう。歴史書を紐解くと、1922年(大正11年)神戸市在住の貿易商・伊藤長蔵氏が創刊した「阪神ゴルフ」がそれとされている。伊藤氏は、仕事柄、世界各国を渡り歩きながらゴルフの古書を収集し、さまざまなゴルフ関連の書物を記している。いわば、日本におけるゴルフ・ジャーナリストの草分け的存在だ。

「阪神ゴルフ」は、第4号を発刊した9月で廃刊、大谷光明氏等の援助を受けて同年11月に「ゴルフドム」と改題して再創刊、さらに、1943年3月に「日本打球」と再改題して1944年2月に廃刊している。著名人のコラムやゴルファーによる座談会などが掲載され、なかなか充実した編集だったようだ。この「阪神ゴルフ」は、今も、廣野ゴルフ倶楽部(兵庫県)内にあるJGAゴルフミュージアムに置かれている。日本で最も古いトーナメントである日本プロゴルフ選手権の第1回大会が1926年の開催であるからそれよりも4年も早くゴルフ専門誌が発刊されていたことになる。因みに、伊藤氏は、ほかにも業績を残している。そのひとつが、1925年(大正14年)ロンドンで「GOLFERS”TREASURES」という英文のゴルフ場ガイドも発行している。このゴルフ書もさまざまな憂き目に遭う。内容は、英米の名ゴルファーたちの技術書から集めたアドバイスを彼なりにアレンジしたもの。

序文は、当代随一といわれたゴルフ評論家、バーナード・ダーウィン氏に依頼、堂々の出版だった。特製本100部、並製本900部。特製本のものは、総皮表紙、タイトルは金文字、ページの裁断面は金箔仕上げという豪華版。伊藤氏の力の入れようと日本人の誇りを映し出しているようでノスタルジックな風さえ感じさせてくれる。
そうした出版物も、正確な版権知識がなかったため、版権侵害のトラブルに巻き込まれる。ここでも友人2人の手助けで難局を乗り切った経緯がある。同書は、日本人が外国で出版した唯一のゴルフ書として、JGAのゴルフミュージアムに展示されている。
ゴルフの雑誌文化の変遷は、ゴルフの歴史をつぶさに語りかけ、世相をも知らしめる歴史書でもある。

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