ギャラリースタンド

NICE ON 9月号【Vol. 431】


数々の話題を提供した全米オープンがもたらしたゴルフストーリー。
難度、記録、失格問題、アマチュア物語、ゴルフの真髄に触れる出来事も。

今年の全米オープンほど話題に事欠かない大会はなかっただろう。
まずは、優勝者ブルックス・ケプカが88、89年のカーチス・ストレンジ以来29年振りの連覇を果たした。これは、118回の歴史の中で、7人目の快挙となった。達成者には、球聖・ボビー・ジョーンズやベン・ホーガンといった伝説のプレーヤーの名前もある。
メジャーといわれる大会で連覇の記録はどうなっているのか見てみると、最古の全英オープンでは、16回。トム・モリス・シニアが2連覇し、その子であるトム・モリス・ジュニアが3連覇しているのが光る。1016年にスタートした全米プロでは7回。タイガー・ウッズが99・2000年、06・07と2回記録している。マスターズは、意外や3回だけ。ジャック・ニクラウス、ニック・ファルドとタイガー・ウッズ。記録男のタイガーだが、この全米オープンだけ連覇がないのだ。快挙達成の背景には、戦争による中断など時代が見えてくる。
次に、コースセッティング。ケプカの優勝スコアが1オーバーだったことから、コースセッティングの難易度がいかに高かったか想像がつくだろう。

全米ゴルフ協会は難度を高めるため①フェアウエイを狭くする②ラフを伸ばす③グリーンを速くする等を行なうが、今回はグリーンの速さに賛否が分かれた。通常、スティンプメーター(グリーン上でボールの速さを測定する器具)で11フィートが標準だが、今回は13~14はあったという。『半端ない』と選手の間から声がもれたという。
また、解説者の間でも「ベストショットを打ってもいい結果に繋がらないのはアンフェアだった」という感想も聞かれた。難度の高すぎるセッティングには賛否が分かれるところだが、運が左右するショットはいかがなものだろう。

こういった、多くの話題にかき消された格好なのが失格問題だ。フィル・ミケルソンが動いているボールを故意に打ち、2打罰を受けたが失格にならなかった。
失格については、ゴルフ史をみれば多く存在する。あの、球聖ボビー・ジョーンズも失格を経験している。悪たれで名をはせたジョン・デーリーのプッツンは有名だがスコア誤記も目立つ。タイガー・ウッズやジャック・ニクラウスのクラブたたきつけシーンも記憶にある。半面、グレッグ・ノーマンのように自らの行為を申告し、オフィシャルがスコアの書き直しを進めたにもかかわらず、自分を律するため、ゴルフの原点(精神)を守るため、失格となった選手もいる。ゴルフの『尊厳』とは何かを考えさせられる事象である。

今回の全米オープンには、大会史上最多タイとなる20人のアマチュアが出場した。予選を通過したのは3人だったが、ローアマに輝いたのは消防士のマット・パジアレと大学生のルイス・ガニェ。奇しくも2人のスコアは通算15オーバーでミケルソンと同じで48位タイだった。パジアレは1度プロの経験をしているがアマに固持した稀有な選手である。ほかにも、ゴルフとアイスホッケーの二刀流選手や、ガンを発症しプロを断念した選手もいる。
ゴルフに夢を追い、ゴルフに人生を映し出すアマチュアも多い。愛すべきゴルファーのあくなきチャレンジに拍手を送りたいものだ。

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