日本的ゴルフメンタル 第2回

NICE ON 7月号【Vol. 429】


「禅的思考をゴルフに活かす」〜意識を内側に向ける禅的意識と感謝の心〜

前回の「武士道精神をゴルフに活かす」に続き日本的ゴルフメンタルシリーズの第2回目は「禅的思考をゴルフに活かす」をテーマに取り上げたいと思います・・・・、と言っても私は宗教家でもありませんし、宗教の勉強を大学で学んだわけでもありません。根っからのゴルファーです。
ではなぜ今回の「禅的思考」に行き着いたのか?というと一つの出来事がありました。
それは1999年サンディエゴを拠点にミニツアーを転戦し、日々練習に明け暮れていた時のことです、毎日が練習の日々でした。しかしそれは決して辛いものではなく自分への挑戦を楽しんでいたと思います。しかし試合結果はそれほど思わしいものではありませんでした。そんな悶々とした中での出来事です。
私は一人暮らしでアパート生活をしていたのですが、そこに宮崎から夢を求めて修行に来ていた年上のゴルファーに出会いました。日本体育大学ゴルフ部のキャプテンを勤めた経験の持ち主で全てに置いて尊敬に値する方でした。その方とはアパートも一緒だったので練習もよく一緒にしていました。そんなある日、いつもの様にこの先輩ゴルファーとラウンドしながら私はあまりの調子の悪さに愚痴をこぼしたり、失礼な態度をとったりしていました。23歳の若さではあったものの今から思えばとんでもない言動があったように思います。
そのラウンドが終わった後この先輩ゴルファーに一言言われたのです。「ゴルフを出来ている事に感謝していますか?」と・・・・、私が呆然としていると先輩ゴルファーは続けました。「このサンディエゴの地でゴルフが出来ている事、練習に明け暮れる日々を送っている事にあなたは感謝の気持ちを持っていますか?」私は、ナイフで背中を刺された様ななんとも身動きが取れない感覚になった事を今でも鮮明に覚えています。
先輩ゴルファーは続けました。
「ラフに入ったからなんだというのですか?そこからボールが打てる事に感謝をし、最善の策を考えるのがゴルフであり、良きゴルファーです。過去に依存し自分を罵る事がゴルフではありません」と・・・。

次の日すでにエントリーしていた試合がランチョサンディエゴ・ゴルフコースで開催されました。私の好きなコースではありましたが調子はイマイチのまま会場に入りました。案の定ショットは乱れました。ほとんどフェアウェイに行った記憶がないくらいの状態でした。そんなゴルフをしながら昨日の先輩ゴルファーに言われた一言一言を噛み締めながらプレーしました。自分の不甲斐なさ、恥ずかしさ、しかしそれより何より「感謝の気持ち」を心の声で連呼しながら・・・・・。
何とか18ホールのプレーを終えスコアカードを提出した時のことです。係委員の方に「今のところトップタイだから待っててね!」あまりにも意外すぎて初めは誰の事を言っているのか見当もつきませんでした。全ての選手がプレーを終え、また係の方に声をかけられました「プレーオフだから準備してね」と。
私は結局プレーオフには負けたものの、最初の2ホールはともにバーディーで分けるという最高の内容になった事で全く悔いはありませんでした。
私はこの経験からゴルフの奥深さを知りました。そして何より「感謝の気持ちを持つ」と、この意味をもっと掘り下げたくなったのです。

さて、ここからは今回の「禅的思考をゴルフに活かす」ことの本題に入って行きたいと思います。
実は、長々と私の昔話を書いた事にも意味がありまして私はこの経験にゴルフの真髄が組み込まれていて、この時未熟ながらも私は一瞬「禅的思考のゴルフ」が出来ていた様に思うのです。この事についてこれからいくつかポイントをご紹介していきたいと思います。

禅的思考のゴルフ・ポイント1

◯思考のベクトルを内側に向ける
「思考のベクトルを内側に向ける」と聞いてしっくり来る方はどれほどおられるでしょうか?
私達は、普段生活の中で「認知の脳」を使って生きています。周りの状態や周りの人、そして周りの出来事に意識を向けて気を使ったり対応したりしています。当然これらの行為に問題は無いのですが、「意識を外に向けている」という事実が存在します。これを行う脳が「認知脳」です
認知脳が働く事で、普段の生活はスムーズに過ごす事が出来ますが、私がサンディエゴで経験したミニツアーの試合中、私はほぼ意識を自分の内側すなわち自分と対話していた為、意識が外に流される様な事がありませんでした。この事により良い結果を生み出したのです。
このことからも解る様に内側に意識を向ける、すなわち禅的思考はプラス思考とは違いただ今の状態に「気付いていくだけ」の行為を淡々と行う思考なのです。
正に禅的な思考と言えます。
認知の脳は、外界に接着し揺らいだり囚われたりして、辛い思いやイライラを作り出しては自分自身を自爆させていく習性も持ち合わせていますので、ゴルフをしている間はこの禅的思考を意識して今プレー出来ている事に「感謝」し続ける事をオススメします。

禅的思考のゴルフ・ポイント2

◯「評価」や「良し・悪しの判断をしない」
普段私達は、認知脳を使用して生きています。この認知脳は判断や評価をする事も得意な脳です。しかし、この判断や評価が不安や心配にも繋がる事がゴルフ脳に良い影響を与えません。
では、どの様に意識や考えを作っていけば良いかと言いますと「反応する前にまず理解する」事を行いましょう。感情を動かす前に「受け入れる」事を心がけます。
判断や評価をせずに「ただ」受け入れる。
皆さんにこの事をお伝えするとほとんどの方は難しいと言われます。おそらくは、難しいと言うよりも慣れていないと言う方が適切だと感じます。
まずは少しずつ練習して行きましょう。反応せずに「受け入れる」です。
この受け入れることが少しずつできる様になったら反応しない事が最高の勝利である事に気付く事ができるでしょう。
「反応はせずに、受け入れて行動する」この繰り返しこそが禅的思考のゴルフを作り出す第一歩になります。
その先には皆さんが想像もしない様な心地よさが待っているのです。
さあ!皆さんも「禅的思考のゴルフ」を身につけて、悩まず、恐れず心から楽しめるゴルフをプレーしてはいかがでしょうか!

志村 博康プロ(しむら ひろやす)

 志村 博康プロ(しむら ひろやす)

スイングファクトリー代表。高校卒業後アメリカ・サンディエゴに渡米し、USPGAプロのパトリック・E・ショウ氏に師事し、最新のゴルフ理論を学ぶ。カリフォルニアミニツアーにも参戦。京都初のTPI(Titleist Performance Institute)認定プロコーチ。メディカル、フィジカル、テクニカルにおけるゴルフのスペシャリストとして世界基準認定を取得しております。
現在、よしみねゴルフクラブ(京都市西京区)にて完全個人指導にこだわったマンツーマンレッスンを実施。

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