日本的ゴルフメンタル 第1回
「武士道精神をゴルフに活かす」
~からだは心とつながっている~
今までもメンタルに関しては多方面からアプローチをしてきましたが、アメリカ・サンディエゴで最新のゴルフ理論を追求してきた私が、この京都という地でレッスンさせて頂きながら学んできた「ゴルフ道」という点から2回シリーズで日本的ゴルフメンタルを皆様と考えて行きたいと思っています。
第1回目の今回は、「武士道」をゴルフに活かして行けるのではないかと以前から考えておりましたので、是非皆様と共有して行きたいと思います。
ゴルフと武士道・・・・・?
全然違う世界のようですが、実はかなり近いのではないかと私は考えています。以前にも少し触れた事がありますが、宮本武蔵の武士道の考え方はゴルファーの私にとってかなり共感の持てる内容になっています。
さて、先ずは武士道を簡単に考えてみたいと思います。
「何かを早くしようとすれば、早くする事にとらわれる。
気持ちを落ち着かせようと思えば気持ちを落ち着かせる事にとらわれる」
いかがですか?初めから禅問答の様な内容ですが、これをゴルフ的に置き換えると・・・
飛ばそうと思えば、飛ばす事にとらわれる。
ボールに当てようと思えば、当てる事にとらわれる。
と、言ったところでしょうか!こう書くと何となく分かる様な気がする方が多いのではないでしょうか。
ボールを遠くに飛ばしたい!ダフらないようにボールをしっかり打ちたい!こう思うのはゴルファーにとったら当たり前といえば当たり前の話なのですが、こんな経験はないでしょうか?
刻もうと思って軽く振ったら思いっきり飛んで行った事やボールを意識せずに体の回転を意識していたら綺麗にボールに当たってくれた事など・・・・。
「心が何かにとらわれていると心が止まっている。心が止まっているとそれほど早くは動けない。とまらぬ心を尊ぶのが「禅」である」
こんなことを行っている方もいますが、これもまた、「武士道」と言えるのではないでしょうか。
嫌だと思うことが起こってしまい、嫌なことが次々と起こる場合、よく自分の思考を思い返してみて下さい。そうです。思っていることが起こるのです。
これが良いことか悪いことか脳は判断しません。ただ意識したりイメージしたことを潜在意識の中で行動や結果として表現してしまう傾向にあるのです。
これを観念運動と言ったりもします。顕在意識では認識していなくても潜在意識が反応している様な状態です。
冒頭のタイトルに~からだと心はつながっている~と書きましたが、そんなつもりはないことが起こる。でもよくよく自分の心の奥底を見ていくとミスを恐れる心や良く無いことが起こるかもしれないと心配をしていることがあります。一般的に心配することは悪いことだとは思われていませんが、脳の観点から言うと観念運動が働いて知らず知らずのうちに体が強張ったりテンポが悪くなることが起こるのです。
「心をどこにも置かなければ、心はどこにもある」
心をミスの意識に置けばそれはミスを招く。
どこに置くかは実はみなさん次第なのかもしれないと言うことです。
よく、レッスンをしていると「やってるつもりです」と言う返答が返ってきます。これも一つは、自らの心をどこに置いているかがわかっていない時に発せられる言葉なのかもしれません。
「水は自在に流れるが、氷は固まって動くことができない。心は広げるのがいい。何かに氣を取られると心なんてあっという間に固まる」
ゴルフは、なんて面白いスポーツだろうと日々感じながら私は過ごしています。これほどまでに己を見つめて行けるスポーツはなかなかないと思っています。
金メダリストの小平奈緒選手に体の意識や古武術を指導されているびわこ成蹊スポーツ大学の高橋佳三先生が先日、「スポーツはだいたい自爆していって負けるのです」と仰っていましたが当にそのとおりだと思いました。
私は日頃からプロを目指す選手や全国で上位を目指す方などには「水になりなさい!」と言います。それは、心もからだも。
京都には「侘び寂びの心」と言う素晴らしい考え方がありますよね。特にお茶の世界で言われている様ですが、お茶室を飾る竹垣がありますよね、青竹で造った竹垣は青々していてこれからの夏の季節には涼しさを運んでくれます。とても綺麗でいつまでもこのままでいてほしいと人は思います。しかし、この青々した状態は長くは続きません。一週間もすると端の方から水分が抜けていきます。青々していたところが日に日に変化をして白くなっていくのです。ある人はこれを見てせっかくの青竹があっという間に質が落ちてしまったと言います。つまり「青竹に居着いているのです」いつまでもこうあってほしいと言う心が本来「水」である心を凍らせてしまうのでしょうね。竹は日々移り行きます。移り行ける状態こそが美しい。自分自身の心と向き合い青竹が白くなり数年すると深みのある黄金色に変化していく。日々同じことが無いことが居着かない心を教えてくれているのでしょうね。ここに生きることの素晴らしさ美しさを「侘び寂び」として感じ取った京都人の心は本当に素晴らしいし、この心こそゴルフに求められる真髄なのでは無いでしょうか。
ミスを受け入れ、変化を受け入れ、結果を受け入れて己と向き合い心静かに自然を感じることの出来るゴルフというスポーツをされている皆様は最高の幸福に恵まれているのでは無いでしょうか・・・・。
次回は第2回の日本的ゴルフメンタルシリーズとして「禅」をテーマにお伝えする予定です。
志村 博康プロ(しむら ひろやす)
スイングファクトリー代表。高校卒業後アメリカ・サンディエゴに渡米し、USPGAプロのパトリック・E・ショウ氏に師事し、最新のゴルフ理論を学ぶ。カリフォルニアミニツアーにも参戦。京都初のTPI(Titleist Performance Institute)認定プロコーチ。メディカル、フィジカル、テクニカルにおけるゴルフのスペシャリストとして世界基準認定を取得しております。
現在、よしみねゴルフクラブ(京都市西京区)にて完全個人指導にこだわったマンツーマンレッスンを実施。