スイングファクトリー 代表/TPI認定プロコーチ

志村 博康さん
Hiroyasu Shimura

NICE ON 3月号【Vol. 437】

今回のゲストは昨年までWEBナイスオンで「志村コーチのワンポイントレッスン」を連載していただいた、スイングファクトリー代表/TPI(Titleist Performance Institute)認定プロコーチの志村博康さんです。志村さんの経歴は大変ユニークで高校卒業後、単身アメリカに渡って最新のゴルフ理論を学ばれ、現在はゴルフショップ スイングファクトリーゴルフギアベースの経営とよしみねゴルフクラブにて完全個人指導にこだわったマンツーマンレッスンをされています。今回は志村さんのゴルフ人生と哲学についてじっくりと伺いました。

取材日:2019年2月4日/場所:スイングファクトリーゴルフギアベース(京都府向日市)


ゴルフとの出会い〜アメリカ留学へ

志村さんの連載コラムはとてもユニークで、人間の身体の構造を知り、いかに効率的に動かしていけばよいかということをわかりやすくレクチャーしていただいて、読者の皆様にも大変好評を博しました。本日は志村さんのこれまでのゴルフ人生であるとか人生哲学にフォーカスしてお話を伺って行きたいと思います。まず、ゴルフを始められたのはいつ頃だったのでしょうか?

志村 高校1年生の半ば頃です。

きっかけはどのようなことだったのでしょうか?

志村 実はどうしてもゴルフをやりたかったというわけではなかったんです。ゴルフを始めるまでは中学から熱心に野球をやっていて、自分でもそこそこ自信を持っていました。出身地の岩手県は今でこそ大谷翔平、菊池雄星など世界に通じるプロ野球選手を輩出していますが、僕のいた頃は皆無でしたので、僕が岩手県初のプロ野球選手になるんだと真剣に考えていたくらいでした(笑)。しかし、右腕にけがを負ってしまい野球の道を断念せざるを得なくなったんです。
 そこで何か野球以上に情熱を傾けられるものがないかと考えていた時に出会ったのがゴルフでした。とにかくうまくなりたくて練習に励みましたが、徐々にその指導方法やトレーニング方法に何となく違和感を覚え始めました。「こういう感じで打ちなさい」とか「トップはこの辺にあげなさい」とか「とにかく球をたくさん打て」とか…なぜそれが必要なのかという理由も明確ではなくて、僕にはとても抽象的に思えました。そんな中、ある方に「どうせやるならアメリカへ行ってみてはどうか」と勧められました。実は日本体育大学から推薦をいただいていて進学を予定していたのですが、思い切って単身アメリカへ渡ることにしました。

かなり思い切った決断ですね(笑)。あちらでは学校へ通われたのですか?

志村 アメリカ行きを勧めて下さった方から学校の資料をいただいていたんですが、それがなんと年間1千万円くらいかかって・・・(笑)。その話を当時お世話になっていた練習場の社長さんにすると、「そんな親不孝はするな。ただ、アメリカ行きはお前の人生のためにはいいことだと思うので、行くのなら何にも頼らず一から苦労をしなさい」と言われ、決心がつきました。心が決まったらもう不安は微塵もなくて、とにかくゴルフというスポーツで成功したいという気持ちだけでアメリカへ渡りました。

どちらへ行かれたのでしょうか?

志村 ゴルフのメッカであるカリフォルニア州のサンディエゴです。そこでミニツアーに参戦しながら、ゴルフの最新理論を学びました。ミニツアーはプロの大会なんですが、アメリカでは一番上にPGAがあってその下に下部ツアーであるドットコムツアーというのがあって、その下に各州のミニツアーがあるわけです。

ピラミッド型になっていて、実力次第で上に上がって行けるわけですね。アメリカへはどのくらいの期間おられたのですか?

志村 トータルで3年半くらいでしょうか。

その間、最新のゴルフ理論を学ばれたのですね。

志村 USPGAプロのパトリック・E・ショウ氏に師事し、TPI認定のプロコーチの資格も取得しました。

TPIについてご説明いただけますか?

志村 TPIというのはサンディエゴの北部のオーシャンサイドというところにある、「Titlist Performance Institute(タイトリストパフォーマンス研究所)」のことです。この辺りにはタイトリスト、テイラーメード、キャロウェイなど世界のゴルフメーカーの70%以上が集まっていて、その一角にタイトリストがつくった研究所があるんです。ここはトレーニングだけではなく、フィジカル、バイオメカニクス、ジュニア指導、スイング理論などゴルファーの身体にまつわるあらゆる研究を行うゴルフフィットネスの総合機関で、現在、世界のゴルフ先進国では多くのプロ選手がここのトレーニング方法を取り入れています。僕はそこで勉強し、京都で初めてのTPI認定のプロコーチの資格を取得しました。

TPIにて

日本とアメリカの練習方法は全く違っていましたか?

志村 アメリカの場合は身体のメカニズムから導き出した科学的なトレーニング方法なので、納得して練習に励むことができました。例えば肩甲骨と骨盤の動きが連鎖運動を生み出して、そのエネルギーがボールに伝わっていくことを具体的にグラフで見せてくれるわけです。日本の場合だととにかく腹筋を鍛えろとか言われますが(笑)、腹筋が硬くなると却って背中を痛めてしまうんです。また、ボールを打つ量も極めて少ない。科学的に必要がないと判断されていることに時間を費やさない。アスリートファーストの精神が徹底しています。

日本の場合、まず根性論(笑)から入るんでしょうね。正しい練習方法をお知りになりたい方は、WEBナイスオンの「志村コーチのワンポイントレッスン」をぜひご覧ください(笑)。

スイングファクトリー設立〜指導者としての人生

ここからは志村さんが帰国されて、向日市でスイングファクトリーを設立されてからのお話をお伺いします。岩手県ご出身の志村さんがなぜ京都でゴルフショップをオープンされたのですか?

志村 アメリカで出会った家内が、京都出身だったものでこちらにまいりました。このショップではいわゆる既製品というものは基本的に扱っていなくて、すべてお客様に合わせたオーダーメイドで作らせていただいています。もちろん、加工・修理なども承っています。

ゴルフレッスンもこちらでされているのですか?

志村 西京区のよしみねゴルフクラブで1対1のマンツーマン個人レッスンを行なっています。単発レッスンですのでここが気になるなという時だけに来られてもいいし、継続的に通われてもいいので、比較的通いやすいのではないかと思います。また、ジュニアゴルファー育成にも力を入れています。

ゴルフショップ スイングファクトリーゴルフギアベース(京都府向日市)

TPIで取得されたメソッドを中心としたレッスン方法なのでしょうか?

志村 それに加えて、僕が大変影響を受けた松村卓先生が提唱されている骨ストレッチやびわこ成蹊スポーツ大学教授の高橋佳三先生が研究されている古武術、さらに身体の動きに大きな影響を与える可能性もある脳科学、心理学的な要素も取り入れています。

骨ストレッチというのはどのようなものでしょうか?

志村 従来のストレッチのように筋肉を伸ばす方法ではなく、身体の中心の骨格を効果的に動かして全身のバランスを整え、関節や筋肉の可動域を広げ柔軟性を向上させる方法です。身体全体の骨組みをイメージすること、骨の動きを理解することが、実は効率的なエネルギーを生んでいくのです。

レッスン内容を生徒さんに伝えるのは難しい面もあるかと思います。どのようなことに気を付けて教えておられますか?

志村 レッスンと言ってもやはり対人関係の部分が一番大事だと思います。指導者としてスタートした頃に言われた言葉を今も大事にしています。「水はつかめません、水は汲むものです。人の心はつかめません、人の心は汲むものです」というものです。この人は何を求めて何を困ってここに来られているのかという、その方の気持ちを汲むことに重点を置いています。

ジュニアゴルファー育成にも力を入れておられるということですが、子供さんたちへの接し方についてはいかがですか?

志村 笑顔で目を見て話をよく聞いてあげるということが大切です。簡単なことのようですが、自分も含めて大人の皆さんもなかなかできていない(笑)。僕も中学1年生と小学6年生の女の子の父親ですが、ジュニアレッスンをするようになってから彼女たちへの接し方がすごく変わったと思いますので、自分にとっては一石二鳥にも三鳥にもなっているところはあります(笑)。

ジュニアレッスン風景

それはよかったですね(笑)。他にもゴルフを始められてよかったこととかゴルフの魅力などについてお聞かせください。

志村 大きく二つあります。ひとつは人間関係が広がったことです。ゴルフをやっていなければ絶対出会っていなかったであろうという人たちと様々な大切な時間を共有させていただいたことは僕にとって大きな財産です。さらに今、こうやって京都にいるのもアメリカで家内に出会ったからですし(笑)、僕の今までの人生の出会いはすべてゴルフによって作られたものだなあと実感します。もうひとつは、物事の考え方が変わったということ。指導者として人様にわかりやすく伝えるために様々な勉強をしました。心理学から宗教から経済学から般若心経まで、あらゆる本を読んであらゆる方のセミナーに行きました。アドラー心理学の研究者である岸見一郎先生が書かれたベストセラーの「嫌われる勇気」「叱らない子育て」なども影響を受けた本です。ゴルフの指導にも役立ちますし、家庭内のコミュニケーションにも役立ちました。家内や子供が思ってもいないようなことをやっても、怒ったり自分の感情を表に出したりということは極力しないようになりました。この感情トレーニングはゴルフプレー中にも大変役立ちます(笑)。あらためて家族というのは非常にいいトレーニングツールだなと思います(笑)。

若い方たちのゴルフ離れがよく言われていますが、何かよい解決策があればお聞かせ下さい。

志村 難しい質問ですね(笑)。アメリカで経験したことですが、多くの老若男女の皆さんがゴルフを楽しんでいる。本来ゴルフというスポーツは年齢の壁がないというのが一つの特徴かなと思うんです。日本の場合は若い方に聞くと「敷居が高そうですね」と言われるんです。ですからもう少しジュニアだとか若い方たちが参加しやすいように間口を広げてもいいのかなと思います。

ゴルフ会員権やゴルフ場へのご要望やお気づきの点がありましたらお聞かせください。

志村 これもアメリカの話になってしまいますが、あちらではメンバーシップコースとパブリックコースがとても明確に分かれているんです。メンバーシップコースには一般の方は敷地にも入れません。他方、パブリックコースも充実しているので、誰でもいつでも安価でプレーができます。日本の場合そのあたりが結構あいまいになっているように感じます。明確に分けた方がメンバーシップコースとしての価値も上がりますし、ステイタスを求める方にとっては会員になる動機づけにもなるのではないかと思います。

ありがとうございました。最後になりましたが今後の目標をお聞かせください。

志村 私どもではジュニアを対象にしたサンディエゴでのゴルフ合宿もやっているのですが、技術を磨いたり人間関係や視野を広げていくのに有益だと思っています。最近海外留学、ましてやゴルフ留学をされる若者たちが減ったということをよく聞きます。しかし世界の人たちと触れ合うことはとても貴重な経験です。それを一人でも多くの子供たちに体験していただけるよう微力ながら尽力していけたらと考えています。

本日は興味深いお話をたくさんしていただき、ありがとうございました。

スイングファクトリー 代表/TPI認定プロコーチ
https://swing-factory.com/
志村 博康さん

Profile
京都市南区在住
1976年5月15日生まれ(満42歳)
●ゴルフ歴  約25年

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